長谷川利行展

- ごあいさつ -

本年当画廊は開廊して３５年を迎えることができました。この機会に開廊以来、
数多くの作品を扱ってまいりました、私の最も敬愛する画家である長谷川利行
の作品展を１０年ぶりに開催いたします。
この展覧会の会期中である10月12日は利行の命日で、没後84年を迎えるわけ
ですが、その間多くの物故作家が時の検証の過程で淘汰されていく中で、近年
その評価はますます高まっています。今では利行の作品が普遍的な芸術として
の力を持っていることは、衆目の一致するところになっています。
ある安井賞作家が私の画廊で利行の作品を見た際「絵に血が通っているわ。」
とつぶやきました。これは利行作品の魅力の秘密を端的に言い得ていると思い
ます。「血が通っている」つまり体温がある、何ともいえないぬくもりがあり、
風景や人物が絵の中で生きている、そこが私たちの心を捉えて放さないのでは
ないでしょうか。
そして見過ごしてはならないのは、利行の天才的とも言える色彩と空間感覚です。
彼の作品には美しい色彩ときちんとした空間があります。このことが彼独得の絵
のぬくもりとあいまって、この上ない美しい作品を生み出しています。
小規模な展覧会ではございますが、長谷川利行の魅力を感じていただければ、
幸いに存じます。

　　　　　　　　　　　　　　　　2024年10月　フクヤマ画廊　福山茂